アーニスはフィリピンに伝わる伝統武術です。スペイン統治時代にモロ(イスラム教徒)の海賊と闘うためにスペイン人より伝えられた「アルネス」と呼ばれるスペイン式剣術に、現地の人たちのさまざまな工夫が加わり、さらに20世紀に入ってから日本やアメリカなどの外国の武術の要素が加わってできた武術です。
バストンと呼ばれる長さ70cmほどのスティックを使って闘う武術ですが、相手を打つだけでなく、スティックを使って相手の関節を極めたり、相手を投げたりなどさまざまな技法があります。また流派によって違いはありますが、スティックを使った技術は、そのままの動きでナイフや徒手などにも応用ができる万能武術です。
フィリピンでは国技となっており学校教育にも取り入れられていますが、フィリピンの移民が多く住むアメリカでも広く練習されており、近年ではハリウッド映画のアクションシーンにもアーニスの技術を見ることができます。
ここではフジ・アーニス・クラブで練習する技術を紹介しながらアーニスの概観を説明します。アーニスにはさまざまな流派がありますが、どの流派でも練習する技術にはそれほどの違いはありません。
アーニスの由来について詳しく知りたい方は
下のFUJI ARNIS BLOGをご覧ください。
アーニスはどこから来たか?(1)
アーニスはどこから来たか?(2)
シングル・スティック
スティック1本を片手に持って戦う、現代のアーニスを代表する技術です。ショートレンジを専門とするコルト・クルバダ・エスクリマやロングレンジを専門とするデ・カンポ・エスクリマなど流派によって技術の違いはありますが、一般的には近い間合いで相手の攻撃をブロックしてカウンターを打ち込み、ディスアーム(武器を奪う)するのが基本形となります。
ダブル・スティック
スティック2本を両手に持って戦う技術です。シングル・スティックと動きは同じで、相手の攻撃をブロックしてカウンターを打ち込みますが、シングル・スティックの時におこなっていた左手のチェックがスティックによるチェックになるため、シングル・スティックより遠い間合いを取ります。
エスパダ・イ・ダガ
右手にスティック、左手にナイフを持って戦う20世紀初頭のアーニスの技術です。右手に剣(エスパダ)、左手にナイフ(ダガ)を持つスペイン剣術に起源を持つ技術ですが、アーニスのエスパダ・イ・ダガでは右手に持つ武器はスティックであり、シングル・スティックと同じく近い間合いを取ります。古典的なアーニスを伝えるサンミゲル・エスクリマがこの技術で有名です。
プンタ・イ・ダガ
右手に剣、左手にナイフを持って戦う、19世紀のアーニスの技術です。スペイン剣術エスパダ・イ・ダガに起源を持つ技術であり、ブレードで戦う技術のため、スティックより遠い間合いを取ります。現代のアーニスではほとんど失伝してしまった古い技術ですが、イラストリシモ・エスクリマなどの一部の流派には技術が伝わっています。
クツィリョ
相手のナイフの攻撃を素手でディスアームする技術です。ナイフのディスアームには、遠い間合いで目つぶし用いて相手の動きを止め、ディスアームするスタイル(イラストリシモ・エスクリマ)や、相手の懐に入り込んでナイフを持った手をコントロールしてディスアームするスタイル(クツィリョ)などがあります。
パンガムト
アーニスのディスアームの源流となった、柔道を起源とする護身術で、コンバット・ジュードーなどとも呼ばれています。相手にナイフを突きつけられた状態や、相手に後ろから組みつかれた状態などの不利な状態から脱出する技術です。
アーニスの技術について詳しく知りたい方は
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アーニス/エスクリマの技術の変遷(1)
アーニス/エスクリマの技術の変遷(2)
アーニス/エスクリマの技術の変遷(3)